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ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。

2023-12-25 MAiL 不動産

不動産業界のDX化に迫る

DXの導入が遅れていた不動産業界にスポットをあて、不動産DXの現状を考察し、DXを導入する必要性やメリット、DX化の事例紹介とDX推進に向けた課題を解説していく。

不動産業界とDX

近年、多くの業界や企業でIT化やデジタル技術を駆使した「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が推進されているが、コロナ渦を乗り越えた今、不動産業界においてもDX化の波が訪れており、社員の働き方改革だけでなく、モデルハウス見学やマンションの価格査定などこれまででは想像もつかなかった活用が進んでおり、DX導入の遅れは今後、企業の競争力や優位性を確立できない事態を招くと言われている。本記事では、DXの導入が遅れていた不動産業界にスポットをあて、DXを導入する必要性やメリット、DX化の事例紹介とDX推進に向けた課題を解説していきたい。

不動産DXの現状とは

この数年の不動産業界において最も変容を遂げたのはテレワークの導入状況だ。総務省の「令和元年 通信利用動向調査報告書」によると、2019年時点の不動産業のテレワーク導入状況は25.4%であり、情報通信業や金融・保険業と比べ、半数程度の低水準であったが、最新の「令和4年 通信利用動向調査報告書」における2022年時点の不動産業のテレワーク導入状況では64.9%と3年間で他業界の水準まで急激に加速したことが分かる。このように業界全体においても変革期を迎えている。しかしながら、不動産DXは、多くの企業で必要性は高く感じられているが、取り組みは進んでいないという。全国賃貸住宅新聞社が行った「不動産業界のDX推進状況調査」では、98.4%の事業者がDXの重要性を認識していながら、実際に取り組みを行っている事業者は31.9%と、必要性を認識している企業の割合と比較して極端に低く、DX推進のニーズは非常に高い一方で、その必要性やメリットの理解が周知されていない現状が浮き彫りになっている。

参考:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/pdf/HR201900_002.pdf 
参考:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/pdf/HR202200_002.pdf
参考:https://www.zenchin.com/news/content-555.php

DXを導入するメリット

不動産業界でDXを推進する必要性はあるのだろうか。不動産DXにおけるメリットを紐解いていく。そもそも不動産DXとは、不動産業界の実務をデジタル化することで、業務改善や顧客満足度の向上につなげる施策であり、この2つがDX化に取り組む最大のメリットとである。現在では当たり前となったWEB会議システムや契約書面の電子化といった業務改善によって、契約書面を郵送または対面で作成することが不要となり、コスト削減を可能とする。また、顧客の立場においても、店舗まで足を運ぶことなく手続きを進められることで場所の制限や移動時間の短縮を可能とし、利便性を高めることで顧客満足度の向上につながるのだ。さらに言えば、オンラインで重要事項説明を行えるようになることで、来店して説明を受ける時間がない方の日程調整の負担を軽減し、重要事項説明書のデータを残すことでトラブル防止にも役立ち、顧客満足度と従業員の生産性向上に大きく貢献すると期待されている。

DX導入の他社事例

それでは、DXを導入した他社事例を見ていく。社内のデータ管理や契約行為のオンライン化などは、着手している企業が多いため、ここではまだ事案の数少ない取り組みを2つ紹介したい。1つ目は三井不動産が導入した「メタバースモデルハウス見学」である。このシステムは、単にWEB上で新築住宅のCGイメージを見られるだけでなく、営業担当者とメタバース内でコミュニケーションを取ることで、住宅に関する質問をその場で回答を聞くことができ、室内のカラーリングの変更もメタバース内で確認できるため、契約後におけるオプション内容等のミスマッチを防止できる効果を持っている。さらに場所を問わないメタバースだからこそ、遠方に住む家族や、建築に詳しい知人と一緒に見学することも可能となり、満足度の高い見学会となっている。

2つ目に紹介するのは、東急不動産が開発した「マンション価格査定AI」だ。従来のマンション価格査定は、査定担当者が市場動向と過去の取引事例を参考に自らの経験値を加味して総合的に算出していた。その為、担当者のスキルによって若干の差異が生じやすいことから、社内のチェック体制を確立し品質担保に時間を費やす必要があった。この膨大な業務をAIに任せ、近隣の取引事例や類似性の高い事例をAIが抽出し、価格を算出することで、査定担当者はAIが導き出した査定価格の確認と補正をするのみとなり、年間約15,000時間の業務時間削減を見込んでいる。


参考:https://webproduct.mitsuihome.co.jp/metaverse (三井不動産)
参考:https://www.livable.co.jp/corp/release/2021/20211109.html (東急不動産)

不動産DXの課題

不動産業界のDX化を推進するにあたり、課題は3つある。一つ目は、システムの導入前からシステムの運用までに長時間の開発期間と莫大な費用を必要とする為、中小企業においては何らかの国の支援策が無ければ難しいという点。2つ目は、国内全体でIT人材が不足している中で、不動産業界にDX化を推進する人材の確保が深刻な問題とされている点。3つ目は、不動産業界における経営陣のIT技術やDX化に対する理解の遅れが挙げられる。IT人材の不足においては、国や行政区がしっかりと打開策を打ち出してほしいが、経営陣においてはDX化のメリットや必要性を理解し、最優先の課題として取り組むことが求められている。

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この記事を書いた人

マーケター

藤原健太

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