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ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。

2025-05-23 MAiL 不動産

街まで広告? PLATEAUが拓く不動産業界の可能性

国土交通省が進める
3D都市モデル整備プロジェクト「PLATEAU (プラトー)」。
全国の都市を3Dで可視化し、
誰でも自由に使えるオープンデータとして公開することで、
都市開発、防災、観光、教育など多様な活用が進められているが、
不動産業界との相性は如何なものか。

PLATEAU(プラトー)とは

2025年5月現在開催中の「大阪・関西万博」に「現実と仮想が描く都市の未来」というテーマの展示がある。実際の都市空間がデジタルで精密に再現されたこの展示では、人々が仮想空間の中を歩きまわり、都市の構造や雰囲気などを体験することができる。
この展示のベースとなっているのが、国土交通省が進める3D都市モデル整備プロジェクト「PLATEAU」(プラトー)だ。オープンデータとして公開されている「PLATEAU」は誰でも自由に使う事ができ、様々な企業や地域で都市開発、防災、観光などの点から大きな期待を寄せられている。
では「PLATEAU」とは一体どのようなサービスなのか。イメージはGoogle Earthのような3Dのバーチャル地図ではあるのだが、Google Earthよりも建物の形状や高さ、用途といった都市情報が精緻に再現され、さらにデータを自由にカスタマイズ・加工できるなど都市開発やマーケティングの様な専門的な用途にも対応する「都市の設計図に近い地図」である。

活用事例は?

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①景観まちづくりDX:
都市の景観計画及び開発計画を三次元で表示・シミュレーション可能な景観街づくり支援ツールを開発。
従来の景観計画では二次元の図面をベースにしたCGやイラストのイメージを利用することが多く、固定された視点による表現では地域住民などへの合意形成などに時間を要する等の課題があったが、3D都市モデルを活用したツールを開発・導入することにより三次元での可視化を実現。これにより計画中の建築物や設置検討中の屋外広告物の見え方を多様な視点から確認することができ、審議プロセスの効率化や景観計画の規制への適合判定精度の向上に寄与することができた。

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②火災延焼シミュレーションの高度化:
PLATEAUの3D都市モデルを活用して火災の延焼シミュレーションを高度化し、より現実的な防災対策の検討が可能に。
相模原市には、傾斜地にも多くの住宅が存在し建物自体の高さのみならず、地盤の標高によっても延焼動態が異なることが想定され、標高反映の有無によるシミュレーションの差異を検証した。その結果標高を考慮した場合の方が延焼範囲が大きく、速度も速いことが確認された。

――――――――――――――――――――――――
③不動産査定の効率化システム:
マーケティングの分野において、3D都市モデルを活用して不動産価値の査定を効率化。
仲介業者が行う査定及び行政機関が行う固定資産税や相続税の評価は二次元地図だけでは把握が難しく、査定や評価に誤差が生じることがあるが、「PLATEAU」を使用した3D都市モデルの中に、不動産の査定に必要な仕組みを構築し、相続税路線価や土砂災害警戒区域等を重ねて表示することにより、公正・公平な評価及び円滑な合意形成などが期待できる。

このように、「PLATEAU」はすでに都市政策や防災の現場で活用され始めており、これは広告という観点で見ても相性が良い。
長い間、間取りや外観パースのような建物自体の情報が主流となっていた不動産広告だが、近年は地方移住や再開発エリアの注目などにより、住宅購入検討者が「どんな暮らしができるか」といったような体験ベースを重要視し、「街選び」そのものが資産価値と関連付けられることが多くなっている。そのため周辺との相互の影響をより明確にする必要があり、「PLATEAU」の活用は有効な手段かもしれない。

もし、「PLATEAU」のような3D都市モデル上で「未来の街並み」や「再開発後の生活風景」を体験できたなら?
あるいは、災害リスクや交通利便性などをリアルに“見える化”し、住まい選びの判断材料にできたなら?など、様々な可能性が考えられる。
上記のようなシミュレーション以外にも、バーチャル都市空間における「まち歩き・購買体験」など、地域の魅力発信や観光促進、通信・インフラ分野においても「PLATEAU」の技術は大きな期待を寄せている。
無限の可能性を秘めた「PLATEAU」が利用できれば、物件の強みや資産性を今以上に伝えられ、街丸ごとを広告にすることが期待できる。

実装には課題もあるが

だが「PLATEAU」を実装するには当然多くの課題も存在する。不動産広告は表現の縛りが多く、想像力が豊かなツールほど、表現の精度とリスク管理が求められる。
また、売主側からすると見せなくていい部分まで見えてしまう可能性があるという事も課題となり得るだろう。他にも予算や技術、見る側の能力など課題は山積みである。
道のりにはこの他にも沢山の課題が考えられるが、それを一つずつ超える先に物件の枠を超えた“街の魅力”を伝える新たな広告体験が得られるだろう。
「現実と仮想が描く都市の未来」は不動産業界にとって大きなチャンスの到来かもしれない。

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ビジネスマネジメント

久野 晶平

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