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ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。

2020-04-24 MAiL 特集記事

いつごろ回復?コロナ収束後の住宅需要

現時点での準備が鍵。需要回復はすぐそこに。

全世界に大打撃を与えている新型コロナウイルス。
日本でも緊急事態宣言が東京都を含むいくつかの都道府県で発令され、
不要不急の外出は厳禁。
不動産業界も痛手を負っている業界の1つだ。
そこで浮かぶのがコロナ収束後、
新築マンション市場における需要の回復に
どれほどの時間を要するのか、という疑問だ。
同じく日本に大打撃を与えた東日本大震災と比較しながら予測していきたい。

3.11後の需要と供給

新型コロナウイルスが全国・世界的に猛威を振るい、日本でも非常事態宣言が出たことで、様々な消費が大きく落ち込んでいる。こうした動きで思い出されるのが、東日本大震災直後だ。当時は状況が違えど、自粛ムードが強く、様々なイベントが中止になり、消費も大きく落ち込んだ。しかし、その後は消費が回復している状況を踏まえると、今回もそれに近い動きが見られそうだ。そこでまずは新型コロナウイルス感染拡大が収束した後の需要回復の予測をたてるにあたって、東日本大震災後における新築マンション市場の需要と供給の変化から見ていきたい。

グラフ①は2010~2011年の月ごとにおける首都圏新築マンションの供給数・初月申込戸数・初月申込率を示したグラフだ。3.11の直後、4月の需要と供給を前年と比較すると初月申込戸数は46%、供給量は24%落ち込んでいることがわかる。しかし既に翌月の5月から復調の兆しを見せた。初月申込戸数は3%、供給量は14%前年比減であるが前月のダウン幅を大きく縮めている。そしてさらに翌月の6月では初月申込戸数も供給数も前年比増となり、そこから12月までは8・10月を除いた全ての月で初月申込戸数も供給数も前年を上回る結果となった。(8月は元々不動産需要が減ることに加えて東日本大震災年であったこと、10月は2010年に1,000戸弱の物件が発売したことが要因で前年比減)特に最終月の12月は初月申込戸数が28%、供給数は37%前年比増にまで至った。すなわち東日本大震災後の新築マンション需要は比較的早いタイミング(2ヶ月程度)でリバウンドする結果であった。

他業界における3.11後の需要

では他の業界における東日本大震災後の需要回復に要した時間はどれほどのものであったのか。グラフ②は1世帯当たり1か月間の支出の対前年同月実質増減率を表したものだ。このうち、基礎的支出(必需品)の業界である、食料、家具・家事用品の項目は大震災関係なしに例年通り、または前年比増で推移している。(光熱・水道は節電が謳われた年であるため年間を通して前年比減で推移)

しかしこの基礎的支出と保健医療業界を除くと東日本大震災後、需要回復までに時間を要していることがわかる。例えば被服及び履物においては3月以降、4月(新生活開始時期)は前年比増であったが5月以降は前年比減が続き、10月以降でようやく前年比増へ。アパレル業界が9月まで苦戦を強いられていた。また教養娯楽に関しても同様だ。こちらも2011年3月以降4月(新生活開始時期)と7月(地デジに切り替わりTVが売れた時期)を除くと12月まで継続して前年比減であった。業界としては夏頃までは旅行業界が、夏以降は教養娯楽用耐久財(TVやPC等)が前年比減を牽引している。そして特に需要の回復に時間を要したのが交通・通信であり、4月以降は10月を除く全月で前年比減であった(10月はほぼ前年比同水準)。中でも自動車業界は5月から9月まで50%前後も前年比減であったことで大きな打撃を受けた。これらを勘案すると新築マンションの需要は他の業界に比べて早い段階で回復したと言えそうだ。

コロナ収束後の需要回復はいつ?

では東日本大震災後における新築マンション市場の動向から今回の新型コロナウイルス感染拡大収束後の需要回復の時期を探っていきたい。東日本大震災後は2ヶ月経過した5月に復調の兆しを見せ、6月に回復、その後需要は前年比増の傾向を見せた。今回も収束後に大きく価格の変動等がないとすると、仮に4月で収束した場合は6月に復調の兆しを見せ、7月に回復、5月いっぱいまで収束に時間を要するとなると7月に復調の兆しを見せ、9月に回復する(8月は不動産需要が減るため)と予測される。一方で他業界を見るとアパレルや旅行等は東日本大震災後、需要回復に比較的時間を要し早くても7ヶ月経過した10月に需要が回復している。この事実から鑑みると今回のコロナ収束後も年内は需要が回復しきれないままでいることが予測される。すなわち新築マンションを供給するデベロッパー等は他業界が需要回復に時間を費やしている年内にどれだけ住宅への消費意識や来場が引き寄せることができるかがターニングポイントになりそうだ。

需要回復は早まる⁉

では一体どのようなマインドを持った顧客がコロナ収束後に動き出しそうなのか。1つ目に考えられるのは言わずもがな元々購買意欲が高い中で、コロナウイルスの影響により購買活動を自粛している層だ。こういった層には適宜メルマガやコンテンツを配信していくことで関係性を保ち、逃さないことを各企業行っているだろう。2つ目に考えられるのがコロナウイルス以前に東京オリンピックが終わってから住宅購入を検討しようと考えていた層だ。この層に関しては更に検討時期を1年伸ばして待つ層と検討時期を早めて外出自粛の時期に検討し始める層に分かれるだろう。こうした予測が事実となり供給サイドが後者の人々の需要を上手く高めることができれば、もしかすると需要回復時期は東日本大震災後よりも早まるかもしれない。すなわち営業自粛時に見込み顧客との関係性を深め、新たな顕在層にアプローチできた企業が2020年の新築マンション市場を制していくことになりそうだ。

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マーケッター

大山恭平

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