
2020年総括 ~市場変化を一挙まとめ~

ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。
マンション共用施設の多様化が進みおよそ10年。キッズルームやゲストルーム、ラウンジ、コンシェルジュだけでなく、ミニショップといった新しい設備も出てきている。 特に、コロナ禍のテレワーク需要により、小規模であってもワーキングスペースを取り入れる物件が増えてきているのも最近の特徴だ。 しかし、共用部には元々「必要・不要」がマンション検討者の中でも議論されており、コロナ禍でその議論が新たな局面を迎えている可能性がある。 そこで、実際にコロナ禍で顧客が必要としている共用部はどれなのかを改めて探るため、「共用施設充実」で「販売中」の3物件の話を聞いてきた。
■ケース1:シティハウス小金井公園(建設中、販売中)
■ケース2:シティテラス小金井公園(竣工済み、完売)
「武蔵小金井」駅最寄りのシティハウス小金井公園は、2020年に発売した、全8棟構成・全740戸の大規模分譲マンション。向かいには小金井公園という東京ドーム17個分の都立公園が立地している。また、先行事例としてシティハウス小金井公園の隣にシティテラス小金井公園(こちらはフィットネスジム、コンシェルジュサービス、ミニショップ、DIYルーム、ライブラリーラウンジ等が設置されている)が位置していることからリアルな話が聞けた。
土地規模が大きく、多様な共用部を設置しており、中でもミニショップやプライベートフォレストという他物件にあまり見られない施設や、ライブラリーラウンジで書籍が閲覧できる空間も設置されている。 話を聞くと、スタディルーム(テレワークスペース)の需要は大きいとのこと。シティハウス小金井公園でのスタディルームには半個室・完全個室(有料)があり、必要に応じて使い分けることが出来る仕様になっていることも顧客の支持を集めているようだ。実際、先行事例(シティテラス小金井公園)内のスタディルームは混み合う様子ではないが、利用者はそこそこいるとのことだった。顧客の声としては、業務内情報が洩れる懸念があり基本的には自宅内での仕事となるが気分転換として利用できる点、静かな環境で会議を行える点等の評価が高かった。また、ゲストルーム・ミニショップについての評価も高い。先行事例(シティテラス小金井公園)共用部の良しあしを見ながらシティハウス小金井公園を計画しており、双方に併設されている施設(ライブラリーラウンジ、スタディルーム、ミニショップ、ゲストルーム等)は需要が高いようであった。
■ケース3:シティテラス新小岩(建設中、販売中)
「新小岩」駅最寄りのシティテラス新小岩は2021年に販売され、全268戸の大規模分譲マンションである。
共用部としては以下の通りだ。
こちらも半個室・完全個室(有料)2パターンのテレワークラウンジが好評とのことだったものの、同様にしてメイン利用にはならない様であった。また、共用部ではないがloTシステム(インターホン対応や冷暖房等をスマートフォンから行うことが出来るシステム)の評価も高い。キッズルームについての評価もあるが将来的に使わなくなった場合や、維持費が高くなってしまうことを懸念される顧客も一定数いるようだ。
3物件に見られたテレワークラウンジは仕事をする上でメインの利用になるわけではないが、実際の需要もあり、特に企業内情報・会議等の理由から完全個室や半個室などのパターンがあるテレワークラウンジ需要が高い。 キッズルームについては共用部ならではのメリット(同マンション内の子どもたちが集まったり、ママ友が出来る)があるものの、子どもを持たない世帯や子どもが大きくなった世帯からすれば使用する機会はなくなり、既述した維持費の問題が出てきてしまう。こういったライフスタイルの変化によって使用の有無が変わってくる設備についてはコストと捉えることもできる。共用施設が充実し始めてから10年ほど経過し、様々なバリエーションが出ている中、「維持費問題」に目を向けるユーザーも多くなった。
一方で、コロナ禍によるテレワーク推進でワークスペース需要は増加。ワクチン接種が進む欧米では2015年ごろから流行りだし、2019年ごろには下火となっていた“コワーキングスペース”に対するニーズも戻ってきている。バリエーションの増えた共用施設は淘汰され、ワークスペース一択となる可能性も見られる中、今後新たな共用施設が生まれるのか、動向に注目したい。