- # 小田原行きたい
売れ行き好調の 「小田原」駅。 流れは継続中!?
ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。
2014年〜2015年のマンション竣工ラッシュによって期待感が上昇していた郊外代表の「八王子」駅。しかし現在、「八王子」駅の新築分譲マンション市場に向かい風が吹いている。その要因と今後の展望を紐解いていく。
東京都の郊外駅として代表的である「八王子」駅周辺では多くの新築分譲マンションが販売されてきたが2014年-2017年で人気のピークを迎え、現在は不調に陥っている。その証拠に「八王子」駅周辺の新築分譲マンションの初月申込率の推移を見ていくと、2014年-2018年までは平均76.5%だったが、2019年-2023年までは平均60.58%と10pt以上下落している。(グラフ①参照)
同様に月平均成約戸数を見ていくと2014年に17.39戸であったが2023年は2.72戸まで下落している。(※各年に販売された新築分譲マンションの総戸数を販売期間で割った平均値) 2014年-2018年の好調と言える5年間から、現在では約半数まで落ちてしまった「八王子」駅周辺のマンションの人気について理由を探っていく。
まず1つ目の理由だが、価格の上昇である。2014年-2023年での坪単価を見ていくと、2014年からは150万円以上、2017年からは100万円以上高騰している。同様に平均価格を見ていくと、2014年より約1,000万円以上値上がりしている。(グラフ③参照)
マンション価格が値上がりしているのは首都圏どのエリアも同様だが八王子駅は本格的に価格高騰による新築マンション需要が枯渇しつつあると考えらえる。その証拠に中古マンションなどの選択肢も検討する層が増えてきている。実際に「八王子」駅の中古マンション市況はここ数年で大きく変化しており、2014年と比較すると中古マンションの取引事例は倍近くまで増加している。(グラフ④参照) 新築マンションの高騰により中古マンションの価格も高騰はしているものの、面積や価格を比較すると中古マンションのほうが当然価格は安く、需要が流れていることが見て取れる。
2つ目の理由だが、商圏の狭さである。「八王子」というエリアは都心から距離があるというイメージが強いのか昨今の新築マンションを見ても市内からの来場がほとんどだ。実際、2022年発売の「エクセレントシティ八王子クラウズ」では「八王子」駅徒歩15分超という立地条件もあり八王子市内が80%程度、他のエリアは日野市から9%とほとんどが地元からの集客である。また、2023年から販売されていた「エクセレントシティ八王子」、「クリオレジダンス八王子」では60~70%以上が八王子市内からの来場となっており、23区内からの来場は10%程度と低めである。コロナ禍に突入して以降郊外需要が高まり、職住近接志向が低下することがトレンドになったが、それでも八王子は地元購入者が中心となっている。よって、現在の「八王子」駅周辺の新築マンション市況は価格高騰によって購入層が限られている中で市外からの流入も少ないために人気が低迷しているのだとわかる。
そんな人気が低迷しつつある八王子だが今後はどのように変化していくのだろうか。現在、八王子駅周辺の新築マンションは計5つの物件が販売中である。中には前述の理由などにより販売開始から1年近くが経過しても完売に至らず、好調とは言えない物件が見られる。
そして今後は3物件が販売を控えており、中でも注目されるのは32階建て499戸のタワーマンションである。となると将来的には価格の上昇が続くと今後も販売の進捗に不安はある一方で、タワーマンションの集客力や影響力・話題性によって今まで見られていなかった広域からの集客が叶い、八王子駅周辺の新築マンション市況は勢いを取り戻せることも考えられる。さらに、八王子市は「八王子」駅南側に大規模な再開発「八王子ミライテラスプロジェクト」を計画しており、今後大きく生まれ変わる見込みだ。タワーマンションだけでなく本計画の話題性も広まれば状況が好転する可能性があるかもしれない。
新築分譲マンションは集客の際、基本的に同エリアの新築分譲マンションとのクオリティの差別化や価格などを大きく打ち出すことが多いが、現状の八王子に関してはそれだけでは足りないのかもしれない。中古マンションとの差別化、価格では勝てないが新築分譲マンションにしかない価値や再開発、エリアでの比較、他のエリアにはなく八王子でなければいけない理由などをより一層強く訴求していく必要があるのかもしれない。