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ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。

2025-04-25 MAiL 不動産

建設ラッシュ! 川越は新たな街へ?

都心から近く、風情を感じることのできる
観光地として知られる「川越」だが、
近年は駅周辺を中心に新築マンションの
建設が目立ち、住宅地としての顔を見せ始めた。
その背景と今後の展望を探っていく。

川越で進むマンション供給の拡大

2024年、首都圏における新築分譲マンションの供給戸数は昨年比14.4%減と、大幅に数を減らしたが、そんな市況に逆らうように建設ラッシュが起きている駅が存在する。それが「川越(本川越)」駅だ。
「川越(本川越)」駅では2023年、113戸の新築分譲マンションが発売されたが、2024年には349戸が発売、と首都圏の減少率とは裏腹に大きく数字を伸ばしている。また、過去3年を比較すると、2019〜2021年の3年間で299戸供給に対し、2022〜2024年の3年間では837戸供給と、「川越(本川越)」駅はマンション市場においてまさにラッシュと言える市況に突入しているように見える。さらに、2025年は150戸の大型物件を含む2物件が販売開始予定であり、後ろには8物件が開発予定とその勢いは加速している。

理由は再開発?更には市況も影響か

話は数年遡るが、2019年ごろまでは「川越(本川越)」駅周辺では新築分譲マンションの開発はあまり主流ではなかったが、複合商業施設「U_PLACE」を筆頭とした2020年ごろの駅周辺の再開発をきっかけに新築分譲マンションの開発が相次いで見られた。
そして駅周辺の再開発を機に発売された新築分譲マンションは、医者や経営者などの地元富裕層や一戸建住宅からの買替希望層などによって蓄積されていた需要が解放され、「川越(本川越)」駅では以前に比べ短期間で大量の物件が発売されても堅調~好調を維持することができていた。
実際、2022年2月発売の「ザ・パークハウス川越タワー」では前年までの相場を坪単価が100万円程度上回りながらも、地元や隣接市の経営者や医師などの富裕層からの購入が6∼7割程度、自己資金1,000万円以上が41%、オールキャッシュや一戸建買い替えも30%程度見られるなど、まさに地元周辺に蓄積していた需要が解放され、約9か月で全169戸を完売させた。

だが当然、2022年〜2023年にかけ地元富裕層や一戸建の買替層などの需要は一度満たされ、「川越(本川越)」駅の新築分譲マンションの販売は競合などの影響もあり落ち着きを見せ始めた。
それによって2023年は2021〜2022年に販売開始した新築分譲マンションの在庫を捌いているような印象がうかがえたという。これが2023年の数字のからくりである。 【資料①参照】

このままでは不調に陥るかのようなストーリーだが、「川越(本川越)」駅は前述したとおり、2024年に販売数を大きく伸ばしており、2024年3月に発売を開始した「プラウド川越」は全59戸を約9か月で完売させるなど、再び勢いを見せ始めた。
これには明白な理由があり、前年までの地元需要を満たしている間に、東武東上線沿線や副都心線沿線の新築分譲マンションの販売価格は高騰を続け、沿線の相場に追いつけなくなった層が下り方面へと流入してきたのである。さらに、地元業者の話によると、数年前の再開発時に土地を仕入れていた事業主は、現在の沿線の相場よりも安く販売することができるため、他エリアとの比較をすることにより販売がしやすくなっていたという。
2024年の「川越(本川越)」駅周辺のマンションの坪単価は約300~330万円程度で販売されており、東武東上線や副都心沿線の駅と比較すると割安感はあるのである。【資料②参照】

実際、過去物件では70%程度が地元近隣からの獲得が見られたが、2024年3月発売の「レジェイド本川越コエドテラス」では川越市からの集客が36%、その他埼玉県や都内、神奈川県からで合わせて30%を超えている。
また、2024年5月に販売開始した、現在販売中物件「ブランズ川越新富町」では角住戸や上層階などの比較的高額物件は医師や会社役員などの地元富裕層が購入し、低層階や中住戸は沿線からの顧客が価格重視で購入に至るケースが多いという。

そもそも便利な「川越(本川越)」駅

魅力は再開発や価格だけではない。元々、「川越(本川越)」駅は「西武新宿」駅まで約50分、「池袋」駅までは約40分と通勤・通学のアクセスは悪くない立地で、徒歩圏の「川越市」駅は始発駅ということもあり、地元層の需要を満たした後でも充分に販売を維持できるだけのポテンシャルは有していたのだ。 実際に、20歳代のカップルなどによる購入者・申込も見られており、「小江戸」としての人気な観光地の顔を持ちつつ、アクセス利便を考慮すると資産性なども期待できるため沿線の価格に追いつく前に、と言ったような売り文句で多くの販売が見受けられた。
このように、地元の需要を満たしつつも中広域からの流入によって「川越(本川越)」駅周辺の新築分譲マンションは勢いを取り戻し、販売を進捗させてきているのである。

今後はどうなる?

「川越(本川越)」駅周辺では、再開発に伴う仕入れが少し前だったため、現在の相場が抑えられている、と記したが、今後は同様ではないことが予想される。5年は19階建て、総戸数150戸の「ザ・パークハウス川越フロント」やその他にもいくつもの開発が予定されており、沿線の相場に近づいていくであろう。
それどころか観光地としての顔を持ちつつも住宅地として多くの居住者を抱えることになる「川越(本川越)」駅は今後沿線の相場を引っ張る存在になることも考えられる。
だが、そうなるとさらに下りへ、新たな「川越(本川越)」駅が出始めてくるのは時間の問題なのかもしれない。

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ビジネスマネジメント

久野 晶平

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