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ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。

2020-10-23 MAiL コラム

都心の住宅需要は減少する。これって本当?

減少する都心の住宅需要。メインで該当するのは2つの区。

新型コロナウィルスの影響でニューノーマルという言葉が根付き、
テレワーク推奨企業が増えたことで不動産業界の今後の予測として「都心脱出」という
言葉をよく耳にするようになったが、果たしてそれは実数値として現れているだろうか。
実際の人口動態のデータや新築マンションの売れ行きから
この予測を紐解いていきたい。

都内の人口動態

都心より郊外の住宅需要が増す。不動産業界でも鉄板の予測として耳にする。実際に9月に発表された長谷工アーベストの住みたい街ランキングでは「津田沼」「川口」「橋本」などの郊外都市が大幅ランクUPを果たし、東日本レインズ(不動産流通機構)によると新築戸建の成約件数が6月以降、前年比増の結果となっている。この結果からも郊外都市が人気となっている傾向にはあるのは間違いなさそうだが、郊外移住者は都心のどの辺りから移動しているのだろうか。そこでまずは東京都全体での人口動態を見ていく。下記の図①は2019・2020年それぞれの6~8月の転入・転出数を区別に比較したものだ。(参考:東京都 地域は町村郡・転入・転出は外国を除く)この表を見ると東京23区では2019年に転入超過であったのに対し、2020年は転出超過。その増減差は約-12,000という結果となった。ただ反対に都下は昨年とあまり変わらず転入超過となっており、中でも再開発のあった立川市や小金井市が増加の幅が大きいことがわかる。

都心6区の傾向は?

では具体的に都心6区について見ていきたい。まずほとんど前年と変化がないのが千代田区だ。同区については居住人口が23区内で最も少ない区になるため、そもそも転入・転出する人も少ないことが要因と予測できる。また比較的増減差の少なかったのが渋谷区と文京区である。渋谷区はオフィス街の印象も強いが、中でも恵比寿の人気が上昇中。同地は公園や緑も多くおしゃれで住みやすいという評価を受け、長谷工アーベストの住みたい街ランキングでも23区内で1位。首都圏全体でも昨年の28位から5位に急上昇している。また文京区も居住地として人気が高い。犯罪発生件数が23区内で最も低い(2019年警視庁参考)文教地区であるのが評価の要因だ。

反対に大きくマイナスとなったのが中央区と港区だ。中央区は2019年に転入超過であり、その数値も都内で最も高かったにも関わらず2020年は転入者が大きく減少し、転出超過。また港区も新駅「高輪ゲートウェイ」が開業したにも関わらず、転入数の減少と転出数の増加が同程度にあり、増減差マイナスとなっている。そして新宿については2019年から2020年にかけて増減差がプラスに転じているものの転出超過という結果は変化なしとなった。

都心新築マンションの売行きはいかに

では実際にコロナ禍での都心6区における新築マンションの売れ行きはどうだろうか。次の表は都心6区にて2019年以降で発売した物件と完売の数を表したものだ。(2020年3月前に完売した物件は除く)

この表からは都心6区の中でも文京区の物件は3月以降でも完売物件が14件中9件と比較的多く、コロナ禍でも居住地として人気が高いことがわかる。具体的に好調だったのは例として以下などがある。

いずれも顧客は条件志向が強く上層階から申し込みが入る傾向にあり、都心近くながら騒々しさを感じない住環境の評価が高かったことが大きな好調要因となった。文京区以外の区を見ると千代田区はそもそも販売物件が少なく、他の区は販売されていた物件数に対する完売割合が20~30%と大きな差は見られない。

都心の住宅需要は減少する?

よって、都心の住宅需要が減少するという予測は6~8月の人口動態と新築マンションの売れ行きから判断するとメインで当てはまるのは港区と中央区。千代田区はそもそも人口が少ないため影響はなし、そして比較的需要が落ちていないのは文京区ということになりそうだ。すなわちオフィスの集積するエリアの住宅需要は減少し、オフィス街に近い都心の区でも居住地として適している場合は大きくは落ち込まないという結果になった。よって、この傾向に当てはめていくと例え都心であっても“住む”場所として適している環境だと判断されれば売れ行きは期待できるだろう。今後は都心物件であってもアクセス面より環境を謳う訴求方法も考えていく必要がありそうだ。

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