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ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。

2023-11-24 MAiL 不動産

コロナ渦で加速した、 コンセプト型賃貸の進化

防音賃貸は音大生のためにある⁉ ガレージハウスは車・バイク好きが住む賃貸⁉ その考え方はもう古い。コンセプト型賃貸が進化している背景や、コロナ渦におけるユーザーの変化に対応した事例を紹介し、賃貸マンション業界の行く末と可能性を紐解いていく。

コンセプト型賃貸とは?

コンセプト型賃貸とは、1つのテーマに特化して建物をデザインし、ライフスタイルに沿った環境や設備を完備することで一定のユーザーに向け、暮らし方を提案する賃貸住宅であり、画一的な賃貸物件との差別化を図った物件のことを指す。一言に「コンセプト型賃貸」と言ってもテーマは様々あり、音大生や音楽家に向けた「防音賃貸マンション」や、車・バイクの愛好家に向けた「ガレージハウス」などが代表的なコンセプト型賃貸である。そもそも、コンセプト型賃貸が誕生した背景には、景気の変動や生活スタイルの変化にともない、高級志向や共働き世帯に向けた、セキュリティの強化やコンシェルジュと呼ばれる、クリーニングなどの家事代行を承るサービスが居住者専用の付加価値として流行し、やがて共有部にトレーニングルームを完備したマンションやゴルフ練習場のあるマンションなど、よりコンセプトを明確にした分譲マンションが登場したことにある。

コンセプト型賃貸が注目を集めるようになったのは、それ以降。少子高齢化や人口減少にともない供給過多となった賃貸市場の中で物件の差別化を図り、稼働率を上げることを目的として誕生したわけだが、SNSの影響により「理想のライフスタイルを実現したい」「自分らしさを表現したい」という風潮が世の中に広がり、コンセプト型賃貸をよく目にするようになった。そして、コロナ渦を経験し、コンセプト型賃貸がさらに進化を遂げているという。最新のコンセプト型賃貸とは、どのような特徴があるのだろうか。実例を紹介していきたい。

進化したコンセプト型賃貸 【CASE①】

今年、密かに注目を集めているのが「ゲーミングマンション」という、新たなユーザーをターゲットにした防音賃貸マンションだ。2023年9月に開催された東京ゲームショウでブースを出展した株式会社リブランが手掛ける防音賃貸マンションにおいて、ゲーム業界にスポットをあてた「ミュージションplus」が話題を呼んでいる。これまで、防音賃貸マンションといえば、音大生や音楽家に向け、室内でも周囲を気にすることなく楽器の演奏ができることを特徴としたコンセプト型賃貸だったが、コロナ渦以降の需要の変化に一早く対応し、 これまでにいなかったゲーマー、ストリーマーに向けた防音賃貸マンションの提供を始めている。株式会社リブランが提供するゲーミングマンションの特徴は、既存自社商品の防音賃貸マンションに次の機能をプラスしている。

①最大10Gbpsの高速通信環境「NTTフレッツ光クロスプラン」を全戸に設置。②照明配置や電源確保のカスタマイズ性を向上させる天井のダクトレール。③空気がこもりやすい防音室でも常にキレイな空気を保てる換気性能。④グリーンバックなどお好みの配信背景を可能とするピクチャーレール。⑤来客を知らせる機能をチャイム音ではなく、光の点滅で知らせるフラッシュライト。⑥ハイスペックPCや海外製品に対応できる200V電源。以上6つの機能を加えることで、ゲームに携わるユーザーに熱烈な評価を得ているのだ。e-スポーツが世界中で正式な競技として取り扱われるようになり、「プロゲーマー」や「ゲーム実況」などの新しい分野も誕生している時代背景を考えると、これからの需要の高まりは測り知れないと言える。

新提案を行ったコンセプト型賃貸【CASE②】

次に紹介するコンセプト型賃貸は、新しい機能や性能を追加するのではなく、これまでの常識にとらわれない、新しい暮らし方の提案を行っている事例だ。ガレージハウスと聞くと、誰しもが愛車を眺めながらの暮らしや、自宅内で愛車を整備できる空間や設備が備わっている賃貸マンションを思い浮かべるであろう。そんな固定概念をコロナ渦における生活様式の変容に合わせ、新しい住まい方を提案した企業が株式会社プレミアムガレージハウスだ。同社商品の基本的な建物構成はメゾネットタイプを主軸としており、1階にガレージ、2階が居住空間となっている。

これまでのガレージハウスでは、車やバイク好きがメインターゲットであったが、コロナ渦を背景に「働き方改革」という言葉が世間をにぎわせ、テレワークや企業に属さない自由な働き方が広まりつつある。そこに目を付けたのが、ガレージ空間というわけだ。通勤時間や働く場所への概念が変わったことで、賃貸マンションの定番である駅距離ではなく、自宅での働く環境を求めるユーザーに対し、ガレージ空間を自分だけのオフィスとして活用する暮らし方を提案している。また、ガレージ空間を働く場所として選択する利点は他にもあり、作業スペースの確保はもちろんだが、倉庫としての機能や写真スタジオとしての空間づくりなど、「ガレージ空間だからこそ実現できる仕事場」として新しいガレージハウスの訴求が始まっている。このように、新しい機能や設備を追加するのではなく、これまでの既存商品に新たな用途提案を行うことで、新規ユーザーを生み出したコンセプト型賃貸の成功事例ではないだろうか。

賃貸物件としての空き状況はいかに?

では、画一的な賃貸物件と差別化を図ったコンセプト型賃貸の稼働率はどうだろうか。最初に紹介した「ミュージションplus」を提供する株式会社リブランによると、一般的な賃貸マンションの賃料相場から約3割高いとされているが、2023年9月時点で入居待ちが4,000人を超えているとのこと。また、2つ目に紹介した株式会社プレミアムガレージハウスでは、駅からの距離は関係なく入居率は99%となっており、入居待ちでは、ミュージションplusと同様に約4,000人となっている。今回紹介した企業以外のコンセプト型賃貸においても入居率が非常に高く、入居待ちをすることが定番化されていることから、新規参入の余地は大いにあり、防音賃貸マンションを中心にコンセプトに特化した賃貸マンションが業界内でも競争が激化していくのではないだろうか。

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マーケター

藤原健太

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