2024年総括販売戸数は減少傾向どうなる2025年
NEW2024年4月、JR東海はリニア中央新幹線について、山梨県と長野県の一部の工区で完成が2031年になるという見通しを公表した。目標としていた2027年の開業を断念することを明らかにした。このことによる橋本駅の不動産市場への影響はあったのか。本文で紐解いていく。
橋本駅がリニア停車駅に
時速500kmでの浮上走行により革新的なスピードを手に入れ、新幹線のDNAを受け継いだリニア中央新幹線は東京-名古屋を約40分で結ぶ日本のビッグプロジェクトとして発足した。そして2013年、橋本駅南口に神奈川県駅(仮称)をリニア中央新幹線の新駅として設置することが発表された。それに伴い相模原市は橋本駅周辺エリアを「リニア駅周辺ガイドライン」の対象区域とし、大幅な開発を公表した。【図①】
橋本駅周辺は「駅まち一体牽引ゾーン」「広域交流ゾーン」「ものづくり産業交流ゾーン」「複合都市機能ゾーン」の4つのゾーンにより交流・賑わい軸を中心に地区全体の拠点性や魅力を向上していく事となる。これにより、橋本駅周辺は大きな期待を背負い、駅としての価値を上昇させた。2012年まで4年連続でマイナスだった橋本駅1km圏内の平均公示地価と前年比較変動率はともに2013年を境に現在まで毎年プラスへと好転している。では、このリニア新駅設置の影響で新築マンション市況にどのような影響があったのだろうか。橋本駅周辺駅における新築分譲マンションの売れ行きは、2013年以前の10年間に比べ、2013年以降の10年間では、初月の平均申込率が約59%→約68%と、大きく躍進している。リニア新駅発表により周辺のマンション市場も大きく変化したのである。
2024年4月リニア中央新幹線の2027年開業を断念
だが、開発は順風満帆とはいかなかった。 冒頭に記しているリニア中央新幹線の工事の件を調査すると、リニア中央新幹線の工事計画は大幅に遅れていることがわかる。 リニア中央新幹線の工事は現時点で2-10年の遅れが生じている工区が沿線の1都6県全てにあるといわれている。その要因として、トンネルの崩落事故や工事の中断、遅れや住民との問題などが起きている。また、2020年のコロナウイルス禍によるJR東海の経営悪化などの影響もあり、ここ数年、リニア中央新幹線関連ではバッドニュースが多く見られた。 そして、2027年開業は難しい、との見解を発表していたJR東海は2023年12月に「2027年」を「2027年以降」に変更し、2024年4月にはついに「2027年の開業を断念」へと変更した。
断念による影響はあるのか
このことによる新築マンションの供給件数を比較し、橋本駅周辺への影響を考えていく。 2020.2021.2022年では各1件ずつの供給だったが、2023年以降橋本駅・相模原駅・南橋本駅周辺で販売開始されている新築マンションは2024年7月末時点で8件存在する。【図②】
2023.9-2024.3までの約半年でのこれらの物件の供給は合計で月平均約15戸、2024.3までの直近3か月における供給の平均は合計で月平均約27戸となっている。 一方で問題の2027年開業断念発表以降は、全体では4月が36戸、5月が16戸、6月が20戸、平均すると月24戸の供給とこの3か月と比較しても実は大きく差は無い。むしろ半年で比較すると大きく供給戸数を伸ばしているようにも見て取れる。具体的な供給の例を見ると、リニア中央新幹線の開発が2027年に向けて進んでいた昨年3月に供給を開始したレジェイドシティ橋本Ⅰ・Ⅱは販売から約1カ月で68戸供給・64戸は契約に至っている。
一方で2027年開業を断念した後に先行物件とほぼ同じ立地条件で供給されたレジェイドシティ橋本Ⅲは第1期に供給した13戸は全戸契約。その後販売開始から1カ月で20戸契約に至っている。販売開始1カ月の契約数を総戸数の割合に戻して考えるとⅠ・Ⅱは約40%・Ⅲは25%と数字は下がっているが、実際の来場者を見ると相模原市外からの来場がⅠ・Ⅱは35%であったのに対し、Ⅲは50%と市外来場が増加。購入者も本件の資産性を加味して1,500~2,000万円の買い上がりが見られるなど需要の継続は見て取れる。
リニアの利用よりも駅の再開発
販売例を見ると、橋本駅の人気は継続の傾向にある。 ではなぜリニア中央新幹線開通が2027年よりも延期したにも関わらず需要が継続しているのだろうか。その要因はリニア中央新幹線開通だけでなくそれに伴った再開発が進行中である点が大きい。具体的には京王線の移設・オフィスやイベントブース、観光関連施設や展示場、ホールなど様々な施設の誘致が検討されており、橋本駅は大きく変わろうとしている。 すなわちリニア中央新幹線開通が延期となっても資産性向上の期待値は変わらず橋本駅周辺の人気は今も健在だと考えられる。
以上のような傾向を踏まえると今回のリニア中央新幹線開通の延期によって今後はどのように新築マンション市場は変化していくのだろうか。一見するとリニア中央新幹線開通の延期によって市場はこれまでよりも落ち着く状況が予想できたが発表から4カ月経過してもその様相を呈していない。となると、これまではリニア中央新幹線開通の2027年の前後が最も市況の活性化するピークになったかもしれないが、延期になっても需要が継続されている点から、より期待感の高まり続ける期間が伸びるというプラスに働く可能性が見えてくる。更に2024年7月下旬には全458戸のタワーマンションも供給開始予定であり、今以上に需要が顕在化すればより活況なエリアへと変化していくことも考えらえる。今後の橋本エリアの市況がどのように変化していくのか。これからも注目して見ていきたい。