ARTICLE記事一覧

ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。

2025-07-28 MAiL 不動産

「スペパ」って? 狭小化する住戸の新常識。

都内で2024年に発売された
新築分譲マンションの
専有面積は10年前と比べ7%程度狭小化。
限られた土地の中で満足度の高い
住宅を提供している事業主の工夫とは。

狭小化する新築マンション

昨今の首都圏の新築分譲マンションは価格の高騰や1部屋数億円のタワマンなど、お金の話題に注目が集まりがちだが、その他にも市場に変化が起きている。東京都内で2024年に発売された新築分譲マンションの平均専有面積は64.62㎡であったが10年前にあたる2014年の平均値と比較すると約5㎡、割合にして7%程度減少している。同様に、千葉/埼玉/神奈川県で2024年に発売された新築分譲マンションの平均専有面積は67.21㎡であったが10年前にあたる2014年の平均値と比較すると約6㎡、割合にして8%程度減少している。1都3県において「70㎡台」が一つの目安だった時代から比べると、コンパクト化-狭小化が顕著である。[図①]
もちろん、単価の上昇に伴い総額を下げる目的で専有面積の狭小化が進んでいるのではあるが、昨今の新築分譲マンションは、ただ面積を狭くしているというわけではない。その背景には限られた空間でどれだけ心地よく暮らせるかを追求してきた事業主や設計者たちの努力による「空間の質」を高める工夫、「スペースパフォーマンス(スペパ)」の進化がある。

スペースパフォーマンス

いわゆる「空間効率」という考え方自体は今に始まったことでは無いが、特に最近の物件では廊下の削減や動線の短縮、凹凸を減らすことによるデッドスペースの削減など、限られた面積の中で工夫して空間を利用する設計が主流となっている。
とはいえ、実際に面積を見ると「狭い」という印象から顧客にとっては検討しづらいようにも思えるが、実際の売れ行きはどうなのか、販売事例を確認していく。

①「バウス氷川台(総戸数93戸/2024年9月販売開始)/中央日本土地建物」3LDK面積:61.91㎡∼72.37㎡
両面アウトフレーム設計や、引き戸の採用で空間を有効活用できる間取りが人気により、60㎡台の3LDK住戸の人気が高く、2024年9月発売から約9か月で全戸を完売させた。

②「ルネ柏ディアパーク(総戸数389戸/2024年12月販売開始)/総合地所・京成電鉄・FJネクスト」3LDK面積:62㎡∼72㎡

全389戸のうち約9割が「ウゴクロプラン」という収納空間の広さを変更すことができる可動収納ユニットを搭載しており、「空間対効率」を重視した住戸が高評価であった。
また、本物件では62㎡のコンパクト3LDK住戸も販売しているが、リビング・ダイニングに広さを持たせるため、壁側にI型キッチンを設計、また4畳弱の居室も吊り型クロゼット等の新しい収納を採用することで「空間対効率」を高め、面積以上の広さを体感できる仕様となっている。
本物件では、これだけでなく天井まで全面収納を採用するなど、「スペパ」へのこだわりが高評価を受け、販売から約半年で140戸程を契約した。

また、前述のような専有部の工夫だけでなく、ゲストルームやワークラウンジ、DIYルームなど、生活を助ける共用部のバリエーションも拡充している。
販売事例の「ルネ柏ディアパーク」では共用部にサウナルーム、スタディラウンジ、ランドリールーム、ゲストラウンジなどを構えるといった共用部の充実感も、好調な進捗の追い風となっているという。
専有部は空間の効率を上げることで価格に納得感を持たせ、普段は使わない施設は共用部で補う賢い選択肢を与えることにより、住み手は予算内で充実した暮らしを手に入れ、事業主はニーズに応えた商品づくりが可能になっている。

満足度はどうなっている?

実際、こういった取り組みはデータにも反映されており、リクルートによる「SUUMO住み心地調査(2023年)」では満足度の高い要因として最も挙げられていたのは、「駅距離」や「生活利便性」そして「間取りの工夫」となっていた。
「広い=快適」とは限らず、むしろ限られた面積の中でいかに快適さを実現するかが問われる時代になっている。
また、国土交通省の「住宅・土地統計調査」では住まいの広さに「不満を感じている」と答えた人の割合は2003年の35.6%に対し2018年には24.0%へと減少している。家は狭くなっていても、工夫次第で満足度は向上しているのである。

数字では測れない価値へ

これからの新築分譲マンションは数㎡の増減ではなく、「空間の質」で選ばれる時代に入ってくるだろう。
たとえ同じ65㎡でも、設計の妙で「70㎡並みの心地よさ」や同等以上の満足度を生み出すことはできる。
だからこそ、購入検討の際には「面積」だけに惑わされず、空間のつくり、間取り、共用部との連携まで含めて体感で比較していく視点が求められる。
「スペパ」の進化は今のマンションに暮らす人たちの「満足の根拠」になっていくだろう。

MAiL8月号PDFはこちら

CATEGORY

TAG

WRITER

名前

この記事を書いた人

ビジネスマネジメント

久野 晶平

関連記事

一覧に戻る

このサイトでは、アクセス状況の把握や広告配信などのために、Cookie(クッキー)を使用しています。このバナーを閉じるか、閲覧を継続することでCookieの使用に同意するものとします。
詳細はコチラ詳細はコチラ

OK