
「スペパ」って? 狭小化する住戸の新常識。
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ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。
今冬始動する駅まち一体の鷺沼駅前再開発、
「鷺沼駅前地区第一種市街地再開発事業」。
閑静な高級住宅地としての顔を持つ「鷺沼」駅は
どのような発展を遂げるのであろうか。
田園都市線といえば、東急電鉄が郊外に広大な住宅地を開発し、沿線を都市として成長させてきた日本有数の郊外モデルだ。1960年代に「渋谷」駅から「中央林間」駅までの開発構想が進められて以来、駅ごとに再開発が繰り返され、二子玉川、たまプラーザ、青葉台、溝の口といった主要拠点は次々と街の姿を一新してきた。
特に二子玉川の「ライズ」、たまプラーザ駅前の「たまプラーザテラス」は、その象徴的な成功例として知られている。沿線に住む人々にとって、これらの再開発は利便性と資産価値を押し上げる象徴であり、街のイメージを変えてきた。
そうした流れの中で、長らく未着手だったのが「鷺沼」駅前の再開発だ。東急バスの車庫や駅前の古いビルが広がり、「渋谷」駅から20分の利便性を有する割には駅前が整備されていないという印象が強かった。
高級住宅街としての鷺沼ブランドは確立されていたものの、買い物や娯楽はどうしてもたまプラーザや溝の口に頼らざるを得ないのが実情だった。
その鷺沼が、ついに大規模再開発に踏み出す。2025年の着工を予定し、商業・住宅・公共機能を備えた複合開発として駅前が生まれ変わる計画だ。
田園都市線の都市再編における“ラストピース”と位置づけられるこのプロジェクトは、沿線価値を改めて塗り替える可能性を秘めている。
では、そんな「鷺沼」駅の居住地としての人気はどのように変化しているのか。
この「鷺沼」駅を有する「宮前区」では全体の世帯数が2010年の84,555世帯から2020年には94,808世帯、2024年には106,000世帯超と増加傾向である。
「鷺沼」駅を含む宮前区では長期的に安定した人口・世帯増が続いており、エリアの住宅需要が存在することがわかる。
一方のマンション市場を見ていくと直近の平均坪単価は@327万円で、具体的には【資料①】のような動向だ。
ここで、直近の販売事例を確認していく。
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ドレッセ鷺沼レジデンス
(東急不動産/2023年11月発売/47戸)
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坪単価344万円と、同年に販売されたザ・パークハウス鷺沼(@347万円/三菱地所レジデンス)とともに鷺沼駅の平均価格を押し上げたが、駅前再開発が話題を呼び、川崎市宮前区や東京都世田谷区、横浜市青葉区など東急田園都市線沿線を中心に集客し、販売開始から1年3か月で全47戸を完売した。
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バウス鷺沼Hills
(中央日本土地建物/2023年10月発売/91戸)
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総戸数91戸の大規模分譲で坪単価348万円と周辺相場より高額ながらも、駅前再開発や「たまプラーザ」駅が生活圏であることを訴求。こちらも半数以上を東急田園都市線沿線から集客し残2戸まで進捗している(2025年8月現在)
また、今夏には「ヴィークステージ鷺沼(2025年7月発売/103戸)という大型物件が市場に登場しており、上記2件に続き、再開発の期待を背景に注目を集めそうだ。
では実際にこの「鷺沼」駅の相場は沿線の相場と比較するとどのような立ち位置なのか。
既に再開発が完了している駅が多い「二子玉川〜あざみ野」駅間の相場を見てみると、2025年は沿線356万円に対し「鷺沼」駅は327万円と、比較的低単価でお買い得感が感じられる。【資料②】
だが、この「お買い得」感はそう長くは続かないことが予想される。「鷺沼」駅は現在5物件、計650戸を超える量の開発が予定されており、今冬に始まる再開発事業が更に話題を呼ぶだろう。【資料③】
中でも再開発の中心であるタワーマンションが販売を開始するころには現在の相場とは大きく離れた価格で販売される可能性も高く、その時には東急田園都市線沿線の相場をけん引すらできる駅として生まれ変わっているかもしれない。
「閑静な住宅街」という印象が強かった「鷺沼」駅は教育環境や住環境の良さは折り紙付きではあったが、駅前の機能不足は課題とされていた。
しかし、この再開発により商業施設や公共機能を兼ね備えた新たな生活拠点が誕生することで街のポジションは一段上昇するだろう。
田園都市線における役割としてもたまプラーザの「商業」や溝の口の「交通利便」、青葉台の「文教」といったカラーに対し、鷺沼は「住環境の良さ+利便性」を両立させる新たな拠点へと進化する可能性を秘めている。
資産価値の観点から見ても沿線平均をまだ下回る現在の坪単価水準は将来を見据えたとき、値ごろ感のあるとうし・購入余地を示している。
田園都市線の都市再編の歴史を振り返れば、二子玉川、たまプラーザといった大規模再開発が街の価値を押し上げてきたことは明らかだ。その流れを受け、ついに動き出した鷺沼駅前再開発は、沿線における「ラストピース」としてのインパクトすら持っているだろう。
東急田園都市線再開発の物語はここ「鷺沼」で大きな区切りを迎えようとしている。
鷺沼駅前地区第一種市街地再開発事業 完成イメージ